ニースは、ヨーロッパ各国の王侯貴族や富豪の冬の保養地として栄えました。

今は庶民的な街になったけれど、かつての名残で優美でロココ趣味のビルが市街にたくさん残されています。

ただ、ずっとフランス領であったわけではなく、19世紀まではイタリア公国サボイア家が所有していました。

が、国境ラインの街として大変な経験もしてきたのです。

18世紀にはルイ14世にニース城を破壊されています。

ついに19世紀後半からはフランス領となり現在に至ります。

友人が所有するアパートメントの窓から100年以上前に建てられたビルは現在改装中だそう
ニース駅は25年前に比べ見違えるほどきれいになっていました。画像は自身のイスタグラムから転載しています。

ただ、７０年代以降は街が荒れ、ギャングの根城になったりし、2001年に初めて1ヶ月滞在した頃はまだ、当時のニューヨーク以上に治安の悪さを実感する場所でした。

当時旅行中、エクサンブロバンスでランチをする間、車の中に置いていた荷物の一切合切を盗まれる経験をしました。

翌日、夫はひと足先にニースからニューヨークに帰ることになっていました。

幸いなことに、彼はパスポートを身につけており奇跡的に無事でした。

夫は先に帰国、わたしは当時4歳の娘と二人で、ニースから日本大使館のあるマルセーユまで7時間以上をかけて、パスポートを発行してもらうため汽車で二往復しました。

その時、唯一娘が持っていたお人形のちーちゃんを、列車の中に忘れてきてしまうという悲劇の追い打ちもかかり、いやはや心細かったなぁ。

マセナ広場

パスポートが手に入ってからは、今はもう見なくなった小さな小さなメルセデスを借りました。

ニースばかりか、遠くサントロペまで娘を連れて車で遊びに行きました。

ただ、胸が潰れそうになる経験もしました。

ニース市内の交差点で赤信号で停まると、後ろからすごいスピードでオートバイに乗った男が近づいてきて、わたしの前方に停まっていた車の助手席のドアを開け、素早くハンドバッグをひったくって走り去っていく現場を見てしまったのです。

荷物一切を盗まれた後なだけに、かなり怖く感じ、娘をなんとしても守り切らなくては、と悲壮なほど肩に力が入っていたのが忘れられません。

さて、当時のニースは、往年のエレガンスと美しさをかすかに留める老いた伝説の貴婦人という感じでした。

退廃的でどこか哀れを誘う過去の街でした。

ところが今回行ってみて、驚きました。

街はゴミもあまり落ちておらず、治安は良くなり、街は20年も30年も巻き戻したようにきれいになっていました。

と言っても、往年のビルはそのまま遺されています。

今回は、ニースにアパートを所有する友人と食事をするため、アンティーブから日帰りで列車でニースまで行ってきました。

友人も古き良きビルの優雅を愛し100年以上前に建てられたビルを所有しています。

エレベーターのない時代に建てられたビルに後から螺旋階段の間に小さなエレベーターを取り付けたビル。

ただ広々としたアパートの内装は15年前、全面改装したそうです。３寝室、２バスルームです。

床は全面大理石です。友人が靴を脱いでいるのでわたしたちも。


ファブリックにはニースに相応しく暖かい色を使用しています。



ベッドルーム１

かつては栄華を誇った街も今はいい感じに気さくに変貌しました。
数年前に離婚した彼の趣味は趣味と実益を兼ねて不動産投資です。

歴史的なネグレスコホテルもきれいに改装されています。


コートダジュール（紺碧の海岸）に映えるブルーと白のストライプのパラソル。


甘いビール。


ニースを最後に怪我もなく元気に戻ってこられてホッとしています。
やっぱり慣れた我が家が一番。


戻ってきたら、出発前の救急病院から請求書が届いていました。